虚ろな目をしていたんだ
ただ、少女は美しくて、儚かった
身体は細く。なのに、病的には見えない
まるで人形の様な少女。髪色は銀。ピンク色の唇
それなのに、どうしても虚ろな目をしているか僕は不思議に思っていた
これは薄い意識の中少女を見つめた彼が最初に感じた感想だった



暫くして、漸く意識がはっきりしていくと彼はある事に気づいた
ここは何処だ?そう、彼は今いる場所を知らなかった
薄暗い部屋。窓すらその部屋にはなかった

身体を動かそうとするとジャラジャラと音が聞こえる
あぁ、そうか。僕は縛られているんだ。椅子にも座っている



そうしてまた、彼は気づいた
僕は動けない。それに閉じ込められている

目の前にいる綺麗な少女は誰だ?なぜ僕を閉じ込めた?
なぜ縛る?目的はなんだ?僕は殺されるのか?
彼の脳内にありとあらゆる疑問が生まれてはぐるぐると巡る
しかし、幾ら考えても見に覚えが無い。そうなった原因が浮かばない


そう考えながら彼は少女を刺激しないように辺りを見回した
そして、暫く時が経つ。いや、窓も時計も何も無いこの部屋で時が経った事すら分からないが、経ったと思う
彼は疑問を解決する為に悩んだ挙句に少女になるべく優しく声を掛けた

────君、僕がどうしてこうなっているか知ってるかい?

全く馬鹿な質問をしてしまった
彼は少女に声を掛けた後にすぐにそう思った
どうしてこうなっているか知ってるだなんて
仮に少女が僕を閉じ込めた犯人なら答えてはくれないかもしれないし、刺激して殺されるかもしれない
他に言い方があったかと彼は考えたが他に思いつかなかったので諦めた


そうしてまた時は経つ。暫く彼が少女を見つめていると虚ろな目をして彼女は答えた

────分からない

たった一言。それだけだった
わからない?何故少女がそういったのか
彼は必死にその一言の意味を考える。続けて少女はまた言った

────でも、なるべくしてあなたはそうなったの

そう続けて言われたんだ

彼は何度も頭の中で繰り返しては考え続ける
わからないのに、僕がこうなった理由を知っている?
もし犯人なら、閉じ込めた僕にこんな情報を与えるわけがない
なら、どうして知っている?考えても答えが出なかったのでそのまま彼は少女にその疑問をぶつけた

────どうして僕がこうなった理由を知っているんだい?

なるべくしてなったと言うことは知っているんだろう?そう聞いてみた
しかし、少女は首を横に振る

────私はそう教えられただけで、理由は知らない

ぽそっと小さな声で少女は彼にそう言った
ますます、彼は少女が分からなくなった


彼はまた考える。少女の裏には誰かがいる
これは確定してる筈だ、と
でも、それならどうして少女は目の前に居るのだろう?
その疑問が一番大きかった
すると、そんな彼を無視してマイペースに少女は部屋の扉を開けて出ていった
待てと声を掛けようとしたが、余りにも唐突だったので声を掛け忘れてしまった


長い時間が過ぎる
この部屋には窓も時計も何も無い
だから、あくまでそれは体感で感覚だ
三十分経過してるだけかもしれないし、もう二時間たってるかもしれない
彼の時間はとっくに狂っていた

暫くして、少女は箱を抱えて部屋に戻って来る
そしてまた目の前に座ってぼーっとその箱を見つめた


一体何の箱だろう?と彼はぼーっとしてる少女の箱を見つめる
その視線に気づいたのかそれに応えるかの様にゆっくりと少女は箱の中身を開けた

────中にはサンドイッチが入っていた

少女はそれをゆっくりと食べ始める
なんだ、サンドイッチか。と思った後に彼の腹が盛大に鳴った


その音を少女が耳にすると虚ろな目で彼を見つめた
〝食べたいの?〟と聞いているかのように少女は緩く首をかしげる
彼はそれを感じ取ってこくこくと首を縦に振って頷いた

少女の考えは彼には分からない
ただ、少女は少し迷った後に彼に近づいて食べかけのサンドイッチを彼に与えた


単なるサンドイッチ。それでも閉じ込められている彼にとってはご馳走だ
瑞々しい野菜とハムの肉の旨みが口の中を支配する

美味しい。有りき足りな言葉だったが、何も食べてはいない彼は心からそう感じた

──ありがとうな

感謝を込めて彼は少女にそう言って微笑んだ

──うん

少女は返事を返した


そして、この日は
少女に見つめる事に飽きたのか、脱出してこの部屋から抜けることを諦めたのか分からないが、何も出来ないし、やることも無いので彼は縛られ椅子に座らされたままで目を閉じて休息をとった
ふと、目が覚めると身体が少し軽かった


不思議に思って動くとジャラジャラという音がしない。腕の鎖が解けていた
片腕だけ、鎖が外されていた
相変わらず、椅子に座らされて、動けないままでも、彼にとっては嬉しく感じた

────どうせ動けないんだし、片腕だけでも運動するか

そう言って彼は片腕だけを動かす

────それ、面白いの?

少女がいるのが当たり前に感じてて気づかなかったが、少女が彼にそう聞いた
彼は内心少し驚きながら〝あぁ、まぁ……動けないけど、運動はしないとな〟と苦笑して返事をする
彼はこの空間に順応し、慣れきってしまったようだ
まるで、ここで暮らし、出るのを諦めたかの様だった


少女は興味を持ったらしく、彼に近づいてその様子を眺め続けた
彼は声をかけておいでと少女に言う
少女は素直に頷きそのまま目の前まで来て顔と顔が触れる距離まで近づいた
そっと優しく彼は動かせる片腕で少女の頬に触れる

────あ、ぁぁ……………ぁあ……………

触れられた瞬間、少女の顔は恐怖に歪んだ


少女は恐怖に歪んだ顔を彼に見せるとすぐに離れて部屋を出ていってしまった
彼は最初は不思議に思った
ただ。触れて安心したかっただけなのに、と
そして、彼は気づいた

────僕が動いて触れたから怖がった?

……動いちゃ行けなかったんだ
彼はそれに気づくと心の中でごめんなさいと謝った


そして、誰もいない部屋でやることも無いので少女が来ることを祈って彼は眠った
目が覚めると少女は居た
ちょこんと部屋の片隅に座っている
ノコギリとマジックペンと注射器を持って

───どうしてノコギリと、マジックペンと、注射器?

彼は不思議に思った
起きた彼に気づくと少女が声を掛ける

────痛くないように、するね?

少女は彼に近づいて注射器を首筋に指すとその中身を注入する
するとすぐに彼はだらんと力を抜いてぼーっと天井を見つめ始めた
次に少女はマジックペンで彼の身体のあちこちに点線を描いていく
ぼーっとした意識の中で彼は気づいた

────これは切り取り線だ


そうか、動いちゃ行けなかったから、彼女はわざわざ動かない様に切ってくれるのか
彼は生きる事を諦めて少女に言った

────ありがとうな

────うん

と、返事をして少女微笑みノコギリを持つと彼の身体の点線に刃を合わせて引いていく

ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ……ブチッ
ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ

……薄れていく中、彼が最後に聞いたのはその音だけだった。おしまい
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